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2009年01月04日

世界のインフレターゲット

景気とインフレと金利の記事でも書きましたし、CFDで世界の株や債券などに投資するに際しては、インフレと言うものを理解しないといけません。

インフレが極端に高い国は健全な成長が難しくなりますので、CFDで売るか買うかの重要な判断の1つになります。最近だったら、トルコあたりが個人的には思い浮かびますね。トルコはインフレが強く、財政状況も悪かったにも関わらず成長率もそれほど高くなかったため、金融危機で通貨も株価もかなり大きく下げました。こういうところではCFDで売り建てしとくという戦略は有効でしょう。(南アフリカあたりもあるのですが、トルコほど脆さを感じませんでした。実際、南アフリカの株価は金融危機に際しても日経平均ほども下落しませんでした。)

さて、世界の中央銀行の主たる役割はインフレを抑制しながら健全なる成長を達成する事にあります。インフレを抑制して成長するために政策金利を上げたり下げたりしている訳ですが、そもそもインフレって何%ぐらいが適当なのってかなり難しい議論です。

下に各国のインフレターゲットをまとめてみました。(2008年現在で中長期的な経済状況により見直しが入ります)

インフレターゲット 備考
オーストラリア
2-3%
平均
ブラジル 4.5±2.0% 2008年
カナダ 1-3% 2011年末まで
ユーロ 2%以下 ユーロ全域、中期的に見て
アイスランド 2.5±1.5%
インドネシア 6.5±1.0% 2008年
メキシコ 3.0±1.0%
ニュージーランド 1-3% 中期的に平均して
ノルウェイ 2.5% 1年から3年の中期で
南アフリカ 3-6% CPI
韓国 3±0.5% ヘッドラインインフレ2007年から2009年の年率平均
スウェーデン 2±1.0%
スイス 2%以下
タイ 0-3.5% 四半期毎コアインフレ平均
トルコ 4±2.0% 2007年から2009年
イギリス 2±1.0%


こうして並べてみるとなかなか面白い気がしますが、やはり新興国は高めで5%程度のインフレは許容しています。一方で、先進国は2%前後が多いようです。これは、各国の潜在成長率にも大きく関係があり、GDPが年率2%で成長する平均的な先進国が5%のインフレを許すわけにはいきませんし、5%で成長できる新興国が2%のインフレでは足りません。そのため、各国の成長率にあわせたインフレ率が概ね決まります。

インフレって言葉は日本ではあまり大きな問題には最近なっていませんが、日本は例外的で世界の多くの国でインフレは大きな問題です。インフレって物価が上昇する事を言いますが、日本のように経済の成長が難しくなった国では物価は上昇しにくいものです。一般的には経済が成長している所で起こるもので、経済が成長する事により起こる物価上昇はやむを得ないものがあります。

一方で、物価上昇が行き過ぎると国民の生活に支障をきたします。年率で数%程度の物価上昇なら、今年100円で買えたジュースが来年105円になるとか、10万円のテレビが10万5000円になるといった話でまー給料が多少上がるなどで調整できればせいぜい知れています。

ところが、20%の物価上昇などになると結構大問題で、100円のジュースや豚肉は翌年120円、翌々年は144円とあっという間に1.4倍になります。給料も2年間で1.4倍になればいいのですが、給料を払う経営者だってそんなに簡単に給料増やせません。

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と言う訳で、物価上昇はある程度ゆっくり進んでくれないと混乱を招きます。そうなると経済そのものが成長しなくなり、下手すると物価が上がりすぎてお金持ってても意味ないじゃないかなんてお金そのものの信用を失い、年率2億%のハイパーインフレなんて事になります(ジンバブエです)。

そこで、どの国も行き過ぎた物価上昇は大嫌いで、ある程度の範囲に抑える必要が出てきます。では、どの位がいいのって話になるのですが、これが上のように結構難しいんです。日本では、全てのものが5%の物価上昇をきたすなんて現在ほとんどあり得ない話ですが、南アフリカでは普通ですし、東南アジアでも普通です。アメリカはどうか、中国はどうかって話になり各国で妥当な物価上昇率(インフレ率)は違います。

各国ともにおおむね妥当なインフレ率はなんとなくあるものですが、政治的にあまりこれを明示しません。インフレ率は政策金利を決める最も重要なファクターなのですが、金利を上げると経済が冷え雇用問題にもなりますので一般的にあまり歓迎されず、数字を設定してしまう事による恣意的な部分が排除されてしまう事を恐れているためです。

ところが、近年インフレ率を明確に設定しようと言う国が増えてきており、これをインフレターゲットと呼びます。明示的に定められた国が上のリストになります。南アフリカではこのインフレターゲットを3%〜6%と決めていまして、6%を超えるか超えそうになってきたら金利を引き上げて経済の沈静化を促し、逆にこれを下回る状況でしたら、金利引き下げにより経済活性化を図ります。

アメリカと日本は現在のところインフレターゲットを導入していません。両国とも物価は比較的安定しているのが主な理由ではあります。ただ、インフレターゲットを導入すべきだとする考えもあり、特に現在のFRB議長のバーナンキはインフレターゲット導入支持者として知られています。

日本はインフレ問題が出ていない事と既にゼロ金利状態であり、これ以上金利の引き下げが出来ない状況に陥っているのでそもそもインフレターゲットなど必要ないという状況です。

いずれにしても、世界への投資においては、インフレ率をある程度把握して上記の表と比べれば、危険領域に入ってる国や入りそうな国をマークしておいてタイミングを見計らって売るとかすると面白いですよね。

ランケン
posted by CFD at 13:57 | Comment(4) | TrackBack(1) | 投資と経済
この記事へのコメント
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